少ない年金、どう増やす…50代後半女性 受給遅らせて、増額は?

 
報酬比例部分

 60歳の声が聞こえてくると、老後の生活に思いが及ぶ。これから60代に入る50代後半の女性では、働いた期間があり、厚生年金も多少はあるという人が増えてくる。今日は読者のお便りから、厚生年金と、誰もが受け取る「基礎年金」の両方がある「50代後半、女性の年金」を考える。(佐藤好美)

 青森市に住むパート社員、吉野優子さん(58)=仮名=は最近、老後の生活設計を考え始めた。

 吉野さんは2年後に厚生年金が受け取れる。さらに65歳になると基礎年金も受け取れる。年金受給が身近になり、改めて自分の年金を考えたのだ。

 「年金は、受け取る時期を遅らせる『繰り下げ』をすると、額が増えると聞きました。私の場合、どのくらい遅らせれば、どのくらい年金額が増えるのか知りたいのですが…」

 吉野さんは大学卒業後に就職したが、結婚を機に退職。30代半ばで再び働きに出た。仕事はパートだったが、厚生年金に加入することができ、20年以上、会社員として働いている。

 年金を受け取る時期を遅らせようと思ったのは、急いで年金を受け取らなくても、当座の生活はできそうだから。夫も働いているし、吉野さん自身、まだしばらくは今の職場で働けそうだ。

 少し前に、年金事務所で老後の年金額を計算してもらった。基礎年金と厚生年金を合わせると、65歳から月に10万円弱が受け取れそうだ。「給料がずっと少なかったので、厚生年金が少なくて…」と言う。これをどう増やすかが、今の課題だ。

 ■支給引き上げは女性が5年遅れ

 基礎年金の支給開始は男女とも65歳。厚生年金の支給開始は60歳から65歳へ引き上げ過程にある。引き上げのスピードは男性が早く、女性が5年遅れ。女性の方が、定年退職後の再就職先が見つけにくいことに配慮された。60~64歳の厚生年金は、引き上げに伴う過渡期の年金であることから繰り下げができない。

 ■「お一人さま」見越して受給プランを

 ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは「女性は男性よりも平均余命が長い分、『お一人さま』になる確率が高い。介護が必要になる可能性も高いけれど、子供に介護をしてもらう時代でもない。それを見据えて自分名義の年金額を増やしておくことはとてもいい選択です」と言う。

 吉野さんが検討する「繰り下げ」は、年金の受け取りを遅らせて、本来の自分の年金額より多い年金を受け取る方法。逆に、受け取りを早める「繰り上げ」を選ぶと、年金額は減る。

 受け取る時期は1カ月単位で決めることができ、1カ月遅らせると年金額は月に0・7%増え、1カ月早めると月に0・5%減る。65歳で受け取る年金を、70歳に遅らせれば年金額は1・42倍になる。逆に60歳に前倒せば年金額は70%に減ってしまう。60歳時に自身の本来の年金額の70%の年金を受け取り始めたら、65歳になっても70歳になっても、70%のままだ。

 60代前半の厚年は対象外

 「繰り下げ」ができるのは「基礎年金」と、65歳から受け取る「厚生年金」。

 社会保険労務士の高本博雄さんは「60~64歳で支給される厚生年金を『65歳から受け取りたい』という女性がよくいますが、60~64歳の厚生年金は繰り下げはできません」と指摘する。

 60代前半で受け取った厚生年金について、畠中さんは「生活費と別の口座を作ってためておくといい。老後の資金を増やすなら、ためた5年分で、民間の一時払い個人年金保険に入る手もあります。一時払い型は健康状態の審査が厳しくないのでお勧めです」とする。

 遺族年金、考慮して

 基礎年金や厚生年金を、66歳以後に遅らせて受け取る場合は「加算」に注意が必要だ。

 例えば、会社員の夫と、厚生年金加入が20年未満の妻の場合、それぞれの年金に“家族手当”に当たる加算がつく。夫婦の年齢や繰り下げの仕方によっては、これらが受け取れなくなることがある。年金事務所では、こうした影響も含めて繰り上げや繰り下げの試算がしてもらえるので相談したい。

 「女性の年金」では、あとは何を考えるべきか。高本さんは、夫と死別して単身になることも考慮してアドバイスをする。「基礎年金と厚生年金は、別々に繰り下げることもできます。吉野さんは、ご主人が会社員なので、ご主人と死別すると遺族厚生年金を受ける可能性が高い。遺族厚生年金と一緒に受け続けられる基礎年金を繰り下げた方がいいかもしれません」

 吉野さんのように、夫よりも厚生年金がずっと少ない場合、遺族厚生年金を受け始めると、自分の厚生年金はそこに吸収されてしまう。繰り下げで厚生年金を増やしておいても、受け取り始めて間もなく夫が死亡してしまうと、増やした分を長く受け取れない可能性があるからだ。

 寿命や人生の先行きは読みきれないから、何が「お得」かは分からない。さまざまな可能性を考えて老後の計画を立てておきたい。