奨学金返済にマイナンバー活用 「所得連動型」を検討

 

 月々の返済額を年収に応じて減らしたり、増やしたりできる。文部科学省が、そんな新たな仕組みの奨学金の導入を検討している。「所得連動返還型」と呼ばれ、来年1月に運用が始まるマイナンバー制度によって個人の収入が把握しやすくなるため実現の見通しが立った。無理のない返済ペースが可能となるため、借り手の負担感が軽減され、低迷している回収率の向上にも寄与しそうだ。(玉崎栄次)

 5千億円未回収

 新たな仕組みは、文部科学省の外郭団体「日本学生支援機構」の奨学金が対象。無利子と有利子の2種類があり、国費を財源としている。現在は年収にかかわらず、決まった金額を月々返済することになっているが、延滞者数が高止まりしているのが現状だ。

 機構によると、平成17年度に約99万人、約7400億円だった貸与人数と金額は、27年度に約134万人、約1兆1139億円にまで膨らんだ。大学生らの2・6人に1人が借りていることになる。未回収額(1日以上延滞)は26年度で計約5千億円に上っている。

 現在でも、無利子の奨学金に限り年収300万円以下なら返済を先延ばしする仕組みはある。しかし、新たな仕組みでは、借りた人はより細かく返済ペースを設定することができる。

 例えば年収300万円なら月々5千円、年収500万円なら月々1万5千円というように、借りた人の収入額に応じて返済額が決められる。無理のない範囲の金額が設定されるため、文科省は「貸出金の回収率は確実に向上する」とみている。

 海外例を参考に

 この制度は、借りた人ごとに所得証明によって収入を確認しなければならないなど、煩雑な手続きが必要なため、実現が困難とされていた。しかし、マイナンバーを活用することで、個人の収入情報が効率的に管理できるようになるため、導入の見通しが立った。文科省は10月から検討を始めており、29年度から新制度での貸し出しを始めたい考えだ。

 制度の具体的なイメージは、海外で行われている先行事例が参考となる。

 例えば、英国。基準を日本円に換算して年収約380万円に設定している。この基準額を超えた金額の9%が税務署により徴収される仕組みだ。

 借りた人が返済時に年収480万円だとすれば、380万円を差し引いた100万円の9%にあたる9万円を1年間に返済する。月々7500円を返済すればいい。一方、1千万円の年収があれば、年間約55万円で月々約4万5千円の返済となる。

 課題は山積

 ただ、新たな仕組みには、課題も山積している。

 月々の返済額が収入に応じて減額されても、最終的な総額は変わらないため、返済期間は現在より長期化する。借りた人が病気になったりけがをしたりするリスクは返済期間が長引くほど高まるため、予期せぬトラブルが増える可能性がある。

 また、借りた人が結婚した場合、返済額を決める収入の基準額を個人収入とするのか、世帯収入とするのかも議論が分かれそうだ。国内に住民票のない人はマイナンバー制度の対象外のため、海外在住者をどのように扱うかも検討課題に上がっている。

 奨学金アドバイザーの久米忠史氏は「収入の低い非正規雇用が増える中、新制度が導入されれば、月々の返済がしやすくなり、借り手の負担感の軽減につながる」と評価している。