グランドキャニオン鉄道(1)オトコは60歳から!? 列車の主役はカッコよ過ぎるシニアたち

江藤詩文の世界鉄道旅
「ラグジュアリー・パーラー・クラス」は往路・復路ともに最後尾。行きはガラガラだったが帰りは満席だった

 「グランドキャニオン鉄道」のウリのひとつが、汽笛を鳴らしながらスケジュール通りに出発/到着する“定時運行”だ。出発時刻の30分ほど前に、乗客は屋外シアターに集められカウボーイショーを楽しむ。その間にグランドキャニオン鉄道は入線し、出発準備を進めるのだ。

 ショーのストーリー自体は、馬を連れたカウボーイが仲間割れをして早撃ちで決闘を行い、そこに保安官も加わってドンパチするというわかりやすい寸劇だが、ここで活躍するのがシニア世代のカウボーイたち。彼らは朝いちばんの寸劇に始まって、出発地「ウイリアムス」とグランドキャニオンの南側「サウスリム」を往復する車内で乗客を喜ばせ、停車中は乗客以外の観光客にも記念撮影に応じるなど、休むヒマもなく大活躍している。

 まるでスターのような風格で観客に手を振るのは、いずれも60台以上のシニアだが、実は若者もいるにはいるのだ。すらりとした細身に金髪、甘いマスクの青年カウボーイはどう見てもシニアより見目麗しく、主役を演じてもよさそうなものなのに、寸劇ではいちばん最初に撃ち殺されて地面にうつぶせに倒れ、大物たちがファンに囲まれて記念撮影をする脇で、馬の手入れをしていた。

 大御所のひとり、ダッチさんいわく“カウボーイの渋味が出るのは60歳を過ぎてから”とか。そうかなぁ……。まぁ個人的な賛否はさておき、アメリカの好きなところのひとつが、エンターテインメントの最前線でシニアが現役で活躍していることだ。ロサンゼルスの「ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド」でもオーランドの「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」でもシニアが堂々と花形を演じていた。

 ちなみに、シニアカウボーイのダッチさんは親日家。「日本のサムライとアメリカのカウボーイには相通じるものがある」と、カウボーイ仲間を引き連れて青森へ行き、サムライのコスプレをして写真を撮影したそうだ。余談だが、彼が着用しているカウボーイファッションは仕事用のユニフォームではなくすべて私物。「アメリカ人としてのアイデンティティ」と、日ごろからカウボーイファッションを身につけているという。カウボーイ服のシニア男性がガヤガヤと6人もやって来たなんて、青森の人々はきっとびっくりしただろうな。自慢げに見せてくれた写真の中のサムライ姿のダッチさんは、日ごろから撮影慣れしているからだろうか、なかなかサマになっていた。

■取材協力:ブランドUSAアメリカン航空

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら