今年もミラノでサテリテが開催された。ブースに立った若手デザイナーの様子を眺めていると、「ここから何人のデザイナーが世に認められるのか?」と思わずにはいられない。メディアで紹介されることはあっても、商品化の糸口も見いだせぬまま才能も含めて「死蔵」となるケースは多い。
「あの5年前の挑戦のお蔭です。まだ投資回収の最中ですが、このミラノで発表した作品がそれなりの価格で売れるようになりました。ただもっと大きい成果は、外国で外国人相手に『成熟な大人』でいられるようになったことです。つまり世界の市場で戦える準備ができたのです」と芦沢さん。
成熟という言葉がぼくの耳には響いた。
日本のなかで日本人相手に極めてバランスのとれた意見を話す人が、一歩外にでると急に猛々しくなったり幼稚な言動をとることは珍しくない。本人も自覚があるが、なかなか克服できない。
実践は何事にも勝る。一歩前に踏み出すのは楽ではないが、その経験が人としての器を何倍にも大きくする。芦沢さんの笑顔がそれを物語っている。
◇
ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih