冒頭の90点から50点の自己評価となったデビュー作品はデザイナーの吉岡徳仁の影響を強く受けたものだった。今、吉岡徳仁の作品をどう見るか?
「やはり綺麗だと思います。でも以前ほどには感動しません。今やっているデザインにインスピレーションを提供してくれないし」と村田さんは答える。
彼がミラノで勉強した大学のファッションコース修士課程にはおよそ100人の同級生がいた。90%が外国人で中国、スペイン、ブラジル、ロシア…と多国籍に渡っていた。その多くが卒業したらイタリアのファッションメーカーでデザインをしたいと夢を語っていた。が、彼が知る限り、その夢をかなえられたのは村田さんを含め3人だけだ。
どこのファッションメーカーもデザイナーの数はそう多くない。トップクラスのレベルでいけば、イタリアのインハウスのファッションデザイナーは合計で100人にも満たない。その厳しい競争のなかで、村田さんがどこまで上に行けるか?
独立しない限り誰かのデザインコンセプトを120%表現できることが大事だ。つまり他の誰かの役になりきれるかどうか。それを今の会社でできれば、上のレベルのメーカーに行くのはチャンス次第、とぼくは考える。
これを百も承知している村田さんは既に、それまで聞いていたジャズやクラシック音楽をやめ、ミック・ジャガーやパティ・スミスといったロックを聞いている。食事も肉を中心にした。手首にはリッチモンドのドクロのついたシルバーのブレスレットがある。
リッチモンドの頭の中に近づいているようだ。
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ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih