【江藤詩文の世界鉄道旅】ベルギー国鉄(1)あ~あ、ローカル線の落とし穴…旅人泣かせの“ないない尽くし”

2013.12.21 18:00

ボマル駅に到着した2両編成のベルギー国鉄車両

ボマル駅に到着した2両編成のベルギー国鉄車両【拡大】

  • ポップなグラフィティアートがペイントされた車両が多い。ブリュッセル中央駅はもちろん、乗り換えのマルロワ駅でも何台も発見
  • 旅の起点となるブリュッセル中央駅。ベルギー国内の鉄道はすべて国営ベルギー鉄道によるもので、私鉄はない
  • ヨーロッパらしい、石造りで風情のある駅舎

 ブリュッセル中央駅から急行列車に乗り、マルロワ駅で各駅停車に乗り換え、ボマル駅を出る。すると…。観光案内所なし、タクシー乗り場もバス乗り場もなし、公衆電話なし、英語の案内なし。そこには何もなかった。

 ベルギーは、国土の面積が四国の約1.5倍、九州よりやや小さい国だ。そのなかで、フランダース地方はオランダ語、ワロン地方はフランス語、ドイツ国境付近はドイツ語と、3つの公用語を使用している。首都ブリュッセルでは、オランダ語とフランス語を併用。駅の案内板なども、すべてオランダ語とフランス語が併記され、見た目にもみっちみちに詰まっていて、とても英語が入り込む余地などなさそうだ。

 下車したボマル駅は、フランス語圏のワロン地方にある。従って表記はフランス語のみ。駅の構内にとって返し、明かりのついている窓口の奥に向かって、これだけは話せるフランス語で「すみません、すみません」と、大声を上げる。何度か叫ぶと、口ひげに丸めがね、頭頂部がはげ上がった男性駅員が、突き出たおなかを揺らしながら、ゆっくり近寄って来てくれた。

 旅の目的地は、駅からタクシーで20分ほどのところにある、デュルビュイという町。“世界一ちいさな町”として知られる観光名所だ。ボマルはその最寄り駅。タクシーくらい手配してくれるだろう。そう思ったのは甘かった。

 フランス語を話せない外国人旅行者。そう知ると、彼はなんと、そそくさとつい立ての陰に隠れてしまった。電話が鳴り、しぶしぶ姿を現しても、けしてこちらを見ようとはせず、通話が終わると、すぐさまつい立ての裏に逃げ込んでしまう。

 さすが、非英語圏のヨーロッパのローカル駅。しばし呆然と立ちすくんだ、昼下がりの午後1時。はるか遠くから、クラクションの音が聞こえてきた。

■取材協力:レイルヨーロッパフィンエアーベルギー観光局ワロン・ブリュッセル

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。

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