次に、せっけんと流水で汚れを除去する「日常手洗い」を研究員5人で実施し、手のひらの細菌数を測りました。手のひらを寒天培地に圧着し、除菌表示のあるハンドソープで40秒間しっかり洗い、30秒間流水で泡を流して拭いた後、再び寒天培地に手のひらを圧着して細菌数を測定しました。結果、2人(A、E)は洗浄後の方が細菌数が多く、他の3人(B、C、D)も細菌はまだ残った状態でした。
AとEで細菌が増えた原因として考えられるのは、爪に残った細菌がこぼれ落ち、再度手のひらに付着した可能性です。爪の間には常在菌を含む多くの細菌(手のひら全体の8、9割)が存在し、手洗いすることで爪の外に出てきます。
では、日常手洗いには意味がないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。手洗いの目的は、汚れと外部からの付着微生物の一部を落とし、正常範囲の状態を保つことです。実験は、細菌を完全に除去することが難しいことを示しますが、外部からの汚れは除去できたと考えられます。