地球破壊が進み、文明の転換が求められる今こそ、日本人は自らの文化の美風を自覚し、世界に向けて発信しなければならないと説く。「二一世紀は日本の世紀であるべきです」との冒頭文に、バブル崩壊以降自信を喪失してきた多くの日本人、特に若い世代はどれだけ励まされるだろうか。
また、本書は、計画性・原理原則を欠くという凹型文化の問題点を指摘し、その大規模なモデルケースとして、満洲事変から敗戦に至るまでの過程を取り上げる。上層部が明確な計画を欠いたままズルズルと敗戦まで引きずられていった歴史的事実の指摘は、戦後歴史学で定着した感のある「十五年戦争」「天皇制ファシズム」などの概念に再考を迫るものでもある。(大修館書店・2100円)
評・松井慎一郎(早稲田大講師)