ノーベル賞作家のル・クレジオさん、東大で講演 読者自身を変える小説の力 (3/4ページ)

2014.1.26 12:46

 「空想の世界であっても、細かく描かれ、論理があって読者がその世界を信じることができるような世界をつくりたい」と話すル・クレジオさん。哲学や詩に比べて歴史が浅い小説を「定義しがたいもの」と位置づけ、「自伝でも詩でもなく社会的探究とも歴史書とも違う。いわば雑種のジャンルであって、あらがいがたい力で読者をとりこにする。読んだ後で『自分が変わった』と思うなら、その小説には力がある」。複数の時間が交錯する入れ子構造が作中で巧みに用いられることを指摘されると、「現在というのは過去と来るべき時代の絶えざる混じり合いです。先人の骨、誇り、といった歴史の痕跡の上に私たちは生きている。小説は時代のぶつかり合いを語るのに適切な形でしょう」とも話した。

 インクを使い書く

 初来日は1967年。ノーベル賞受賞後の2009年にも日仏文化会館などで講演しており、日本にも熱心な読者がいる。今回もユーモアを交えた話術で終始聴衆を魅了した。

「作家は利己主義的で、自分が書いているものが『生きうるのだ』という感情を得るために書く」

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