領土問題の基礎が身につく
尖閣をはじめ竹島・北方四島の問題について報道されることは多いが、その歴史的背景やそもそも「領土」「領海」「排他的経済水域」とはなにか、果たしてどれほどの人がきちんと踏まえた上で、そのニュースに触れているだろうか。「国際司法裁判所に訴えたらいい」といった声もよく耳にするが、その実態を知らず、国内の裁判所の延長でとらえている節もあるように思う。Q&A方式の平易な言葉で記された本書は、肩肘(かたひじ)張らずに領土問題の基礎知識を身につけられる好著だ。
「国際関係をおもんぱかるあまり、国家の主権、国民の尊厳を日本政府は見失ってしまったのでは」。著者はそう疑問を呈した上で、東京都の尖閣専門委員として一昨年9月の国有化直前、調査船から自身の目で見た尖閣の自然の豊かさとそれを蝕(むしば)む諸問題に触れ、また3つの岩礁を無登記で標識もないままにしていることに警鐘を鳴らし、それらを解決するためにも「海洋保護区」として緩やかな実効支配強化を行うことを提唱している。