真っ赤なトマトに包丁を入れたときに感じられるみずみずしさ。湿地の水に足を入れたときの冷たさ。夏草の上を走る様子。細部がていねいに描かれている。「物語をよりリアルに感じてもらうため、見た人自身の記憶を呼び起こしたかった」。そんな米林監督のマジックは、音楽にも生かされている。登場人物たちが何度もハミングする名曲「アルハンブラの思い出」は、夢と現実の境界をどんどん消してゆく。
昨年、宮崎監督は「風立ちぬ」を最後に長編アニメからの引退を表明。製作期間8年の難産となった高畑監督の「かぐや姫の物語」も公開された。両監督が関わらない作品について、米林監督は「2人のいないジブリはこんなものか、とは言わせません」と力を込めた。