これも取材なんだから。意を決して、まずは試しに水を出してみると、もちろん湯が出るはずもなく、ぬるい水がちょろちょろと出てきた。食事中のかたには申し訳ないが、悪臭がする便器の上で服を脱ぎ、あまり清潔とは思えない水を浴びなければならない。取材のためという意気込みはどこへやら、あっさりギブアップした。
トイレの前にある洗面所は比較的清潔で、スペースにもゆとりがある。蛇口から出る水の量も申し分ない。バックパッカーのウクライナ人男性ふたりが、半裸になって水を浴び、蛇口の下に頭を突っ込んで、備え付けの液体石けんで髪を洗っていた。ついでに洗濯までしている。こういうときだけは、男性がちょっとうらやましい。
歯を磨き、持参したウェットティッシュやタオルで、できるだけ髪や身体をふき終わると夜7時。もう眠る以外にすることがない。上段のベッドに上るため、靴を脱ぎ、そうっと静かにはしごに足をかける。すると下段のカーテンのはじっこが小さく持ち上がり、子どもが真っ白い歯を見せて小さな手を振った。