「満席です」
耳を疑った。夜10時20分バタワース発、朝5時40分クアラルンプール着の寝台車に乗るはずだったのに。
券売窓口のお姉さんにたどり着くまでも、実はたいへんだった。出発地バンコクのフアランポーン駅には、マレーシアの通貨リンギットへ両替できるところが見つからなかった。列車内に両替商が乗っているという。車内には確かに両替商の男性がいた。だが「持っていたお金が足りなくなった」と開店休業状態。国境駅には両替所がなく、入国管理官が言うには「バタワース駅は新しい駅でATMがある」とのこと。バタワース駅には「ATMはこちら」という貼り紙があった。だが、なんとATM自体がまだ運び込まれていなかった。銀行まで猛暑のなか徒歩で片道20分。窓口ではタイのバーツはもちろん、念のため持参していた日本円もシンガポール・ドルもユーロも米ドルも使えないという。
どうしたかって? 駅前に意味なく座っている5、6人のおじさんのひとりに駅員が何やら事情を話し、持ち逃げされることも覚悟して千円札を1枚渡した。スクーターで出かけて行ったおじさんのおかげで無事にリンギットが手に入り、窓口に取って返すと、今度は1日5回のお祈り中。じりじりしながら30分ほど待ち、ようやく窓口にたどり着いたら「満席」だった。