つらつらと思いを巡らせていると、車窓が何やらおかしなことになってきた。いくつもの使い古したパラソルが立ち並び、車窓ギリギリ、というかいくつかは車体にかすっている。その下にはトマトにキャベツ、ナス、いまが旬のマンゴーまで…。窓からのぞくと、ほぼ真下に売り物の野菜が陳列している状態だ。汚れたプラットフォームに降り立つと、むっとしたにおいが鼻についた。当たり前だ。ホームの隣りは、なんと精肉売り場になっていて、皮をはいだ豚や鶏がむき出しでぶら下がり、牛肉はかたまりのままやはりむき出しで並んでいた。その隣りは魚売り場。こちらも東南アジア特有の湿った熱気のなかに、生魚のにおいが立ち込めている。
かわいい薄紫色の駅舎や、こんなところにもある国王の写真と、喧噪に充ちた市場との対比に心を奪われ、写真を撮影していると、駅長室に招き入れられた。駅長いわく、駅と融合したこの市場は歴史が長く、駅ナカにあるために利便性がよく、通勤客が買い物をするなど庶民の生活を支えているそうだ。生鮮食品のほか、数は少ないが、衣類や生活用品、雑誌や新聞を売るスタンドもある。