線路脇には、ありとあらゆるものが売っていった。野菜や果物、魚、貝。肉売り場の若い女性は、鉈のように大きな肉切り包丁を握りしめたまま、口を開けてぐっすり眠っているし、エビや小魚を発酵させた調味料は、猛暑のなかすごい匂いを発している。食器や調理器具、簡単な衣類やアクセサリーもある。名物の傘は、いくつも交錯して線路に影を落としている。売り子によると、もともとは、商品や買い物客を日射しから守るために、日傘を立てたのが始まりらしい。しかしながら傘を張る位置が低く、身長171センチの私は、腰をかがめなければ行き来できない。買い物客は、でれんと垂れ下がった傘を、時折めくり上げたりして、いかにも買い物しづらそうだ。
なぜ、もっと高い位置にぴしっと傘を張らないのか。そもそも、なぜほこりの立つ線路の横で、食品や鍋釜を売ろうと思ったのだろう。ほんとうにタイは、いつだって謎めいている。
もっとも商品の並べ方は、各自工夫を凝らしていて、大きく分けると、列車が通過しても商品が触れないように、線路ぎりぎりの低い位置に商品を並べる派と、より目に止まったり手に取りやすいように、列車に引っかかる場所に陳列台を置き、列車が行き来するたびに商品を出したり引っ込めたりする派がいるそうだ。