市場内にいきなりチャイムが鳴り響き、売り子たちが一斉に立ち上がった。売り場に招き入れてくれた売り子に、ナスの脇、トマトの後ろに立つように指示される。いよいよだ。まもなくメークローン線がやってくる。目の前は傘でふさがれているので、列車の音をいち早く受け止めようと、精いっぱい耳を澄ました。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら