思わず目を見開き、固まっていると。
「どこから来たのですか」
隣りの食卓についていたおじいさんが、そう声をかけてきた。何杯かビールを飲んだのだろう、ほろ酔いの赤ら顔。男性5人に女性ふたりの7人グループだ。
ほどなくすると、そのうちのひとりが「先に降りているね」と、席を立った。なんとこれからパラグライダーを楽しむという。ほとんど風のない穏やかな午後。空中散歩にはもってこいなのだそうだ。
「な~に、ここまでちょっと上がってきて、気が乗らなければ酔っぱらって鉄道かケーブルカーで降りてもいいし、今日みたいに素敵な日なら、空を飛んで帰るだけのことですよ」と、おじいさん。
「まぁ、今日はたくさん(ビールを)飲んだから、いつもより、ちょいと下りるスピードが速いかもしれませんね」
大笑いして、ぽっこり突き出たたいこ腹を、ぽんっと叩いてみせた。
■取材協力:スイス政府観光局/スイス インターナショナル エアラインズ/スイストラベルシステム
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら