館内には、歴史的に価値が高い20台ほどの車両が展示されていて、これらは不定期に入れ替わる。というのも、この博物館は寄付金によって運営されているが、スイス国鉄が展示車両のメンテナンスなどを行ったり、展示しきれない車両を保管するなど、全面的に協力しているのだ。
ちなみに、前出の「ワニ」とは、「クロコダイル」の愛称で知られる電気機関車のこと。電化された初期の機関車で、1920年代から活躍してきた。ほかに最後のジェネレーションの蒸気機関車は「クロコダイル」、小さなバッテリー機関車は「オクトパス」と、まるで動物園さながら、聞くだけで楽しくなるようなニックネームがつけられている。
ルツェルンっ子は小学校の課外学習などで、必ずここを訪れ、国が誇る交通システムについて学ぶ機会を得るそうだ。こういう環境で育ったからこそ、おしゃれ女子の選択肢が「カフェお茶」か「ショッピング」か「登山鉄道」になるのだな…。なんだかしみじみ納得した。
■取材協力:スイス政府観光局/スイス インターナショナル エアラインズ/スイストラベルシステム
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら