ガヤガヤガヤッ!
出発時刻が近づいてきた午前7時40分。15人くらいの中国人グループがプラットフォームに到着した。大きなビニールバッグにいっぱい詰まった食べものやお茶の入った水筒を携えた、彼ら流の旅スタイルだ。日本人客に加え、ここ数年は韓国・中国からの乗客が増えているそうだ。
スイスを代表する観光列車のひとつ「氷河特急」は、夏季には1時間おきに1日3本、冬季は1日1本運航する。私が乗車したのはサマーシーズンが終わる直前で、ツェルマット駅では、始発にあたる7時52分発900号が出発準備を進めていた。
それにしても、周辺を列強に囲まれ、独自の地位を維持しながら“観光”を産業のひとつに据えてきたスイスの、観光客の扱いの巧みさといったらどうだろう。訪れるたびに舌を巻くような新しい発見がある。
ツェルマット駅には、英語、ドイツ語、イタリア語、フランス語のほかロシア語やスペイン語、中国語など世界の言語で「ようこそ」と書かれている。車内の各座席には、列車の概要を説明したパンフレットと、車内サービスを案内する小さな冊子があらかじめセットされていて、車内サービスはドイツ語、英語、フランス語、イタリア語、中国語、日本語で書かれ、今年用のパンフレットには、さらに韓国語とタイ語での案内も付け加えられていた。シートには、日本語にも対応した音声案内ガイドもある。