砂糖とミルクのついでにスティックチョコレートも返しかけて手が止まる。わ、ヴァローナじゃないか。それを感じたのだろう。売り子のおばさんがもう2本差し出してくれた。「こちらもどうぞ。“ベルギーのチョコレート”はおいしいからね」。ベルギー人というおばさんの言葉に耳を疑う。なぜってヴァローナはフランス製なのだ。
「いいのよ、ベルギーもフランスもほぼ同じだから」。そう言って笑いながら「そんなことを気にするなんて、あなたはどこの国の人?」とおばさん。「へぇ、日本人って細かいのね。だいたいのヨーロッパ人は、ヨーロッパのものであればどこの国かなんて気にしませんよ」。
EUが発足して20年ちょっと。「ベルギーとフランスは同じ」とおばさんが話していたちょうどその頃、タリスはいつの間にかベルギーからオランダへと国境を越えていた。
■取材協力:ベルギー・フランダース政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら