
高速鉄道が停車する駅はモダンなデザインで、まだ新しくピカピカしていた。ヨーロッパや台湾・韓国と違って男性が手助けしてくれることはないが、ホームはフラットでスーツケースを転がしやすいのが嬉しい【拡大】
“どこかにあったかもしれない商務座のラウンジ”を泣く泣く諦め、広大なホールに所在なく立ち尽くす。万一に備えて余裕をみて早く到着した分、時間を持て余してしまった。出発時刻が近くにつれ、自動改札前には賑やかな人だかりができた。もちろん並んでなどいない。「商務座」だろうとなんだろうとこの群衆に入り込むしかないらしい。飛行機の優先搭乗ってなんていいシステムなんだろ。しかしこの時点でも私はまだまだ楽観的だった。だって「商務座」は全席指定席なのだ。最後に乗り込んだって私の席は確保されている。そう、私は中国をまったく知らなかったのだ。
先頭車両の自席にたどり着くと、なぜか5歳くらいの娘を連れた母親がくつろいでいる。しかもシートをベッドモードにして。横たわる母親に抱かれてチョコレート菓子を頬張る娘。私が現れても悪びれることなく、手を振って追い払うから「私が間違えた!?」と引き返した私って、あぁ、やっぱり私って日本人だ。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら