しかし、この事態に焦った親は次のような言動をとってしまう。わが子の気分が落ち込み、成績も下降し、模試の判定はまさかの「合格圏外」。このままでは数年間塾に通わせた“投資”と“時間”がムダになる。そんな不穏な気持ちをつい子どもに直接ぶつけてしまうのだ。しかし、そんな気持ちを子供に直接ぶつけても仕方がない。
そうではなく、親としては自分の不安な感情を封印し、「どうせ自分なんか病」を発症してネガティブな気持ちに支配されている子に、温かなことばをかけ、いかに励まし前進させることができるか。これがしっかりできる親は「一流」であると断言してよい。
▼親子の温泉旅行で見事合格した男の子!
最後にひとつのエピソードを紹介して、本稿を締めくくりたい。
ずいぶん昔の話だが、入試が3カ月後に迫ったタイミングで突然志望校に対する合格イメージを抱けなくなってしまった男の子がいた。聞けば、母親が相当なプレッシャーをかけているとのこと。
そのとき、わたしは土日に塾を休んで母子で小旅行に出かけることを勧めた。不可解な顔を見せる母親に、わたしはこんなことを伝えたのだ。
「母子ともに心身をリフレッシュすることが肝要です。1泊2日でかまいません。のんびりできる温泉などに行きましょう。そして、お母さまに守ってほしいことがあるのです。それは、旅行中は中学受験に関わる話は一切しないこと。そして、旅行から帰宅したら、お子さんに対して『お母さんはあなたが一生懸命勉強に励んできたことは誰よりもわかっている。この前はお母さんもつい不安になってしまって、このままじゃ第1志望校に合格できない、なんてしかったけれど、そのことばは取り消すね。お母さんはあなたが頑張って合格した学校であればどこでも満足だよ』と。たとえそれが本心でなくてもいいのです。本人の気持ちをほぐすためにもそう演じてやってください」