43歳のオッサンは26歳の君を批判しない この世がクソゲーでも向き合うのが中年だ (3/3ページ)

画像はイメージです(Getty Images)
画像はイメージです(Getty Images)【拡大】

 当時は、1浪はもちろん、2浪も珍しくはなかった。参加した5名の中年男子の最長老は45歳だった。転職を未経験者は1名。未婚者は1名。親の介護、子供の教育なども考えなくてはならない年齢になってきた。実家をどうするかということも考えなくてはならない。

 会社でも管理職になっている。一人は関連会社の役員を兼任している。海外赴任を経験した者もいた。「僕達が社会人になったばかりの頃の課長って、もっと楽勝だったよね」と課長職をしている者が言った。そうだと思う。そういえば、当時は不倫していた上司も何人かいたな。でも、我々は「太陽のKomachi Angel」と遊ぶわけにはいかないのだ。

 社会も会社も、さらには個人としても先行きは不透明だが、そして社畜であることを自虐的に語りつつも、ポジティブな空気が漂う、ナイスな会合だった。飲み代として大1枚くらい払ったこと、駅までタクシー移動したことなどからも、大人になったことを実感した。

 社会人を20年やっている。思えば、社会に出てからも、日本経済の浮き沈みを目の前で見てきた。なんせ、20年前には山一證券と北海道拓殖銀行が破綻した。飲みの席でもこの件は話題となった。勤務先も浮き沈みがあった。当時の私たちは「さまよえる蒼い弾丸」だった。

 SMAPの「夜空ノムコウ」の歌詞にサラリーマンの世知辛さを感じたのも約20年前だ。20年前と言えば。安室奈美恵が妊娠・結婚を発表ということもあった。なんかこう、時系列の変化、価値観の違いを感じた。そのSMAPも解散し、安室も引退を表明した。

 世の中はクソゲーだ。無理ゲーだ。それでも、わたしたちには仲間がいる。上を向かなくてもいいから、前を向いて歩くのだ。それが中年だ。「Don't Leave Me」なのだ。

【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)

常見陽平(つねみ・ようへい)千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【常見陽平のビバ!中年】は働き方評論家の常見陽平さんが「中年男性の働き方」をテーマに執筆した連載コラムです。更新は隔週月曜日。

▼常見陽平のビバ!中年のアーカイブはこちら