
『習近平の悲劇』矢板明夫著【拡大】
本書は、トランプ政権が警告する中国の本質を、習近平体制を確立するための権力闘争の過程に着目して描く。それは逆説的だが、習近平自身のカリスマ性、実績・実力不足、それゆえの「反腐敗闘争」と「メディアコントロール」という政治的意図を表す。
対外政策でも、意図的に「韜光養晦(とうこうようかい)」という低姿勢外交からの脱却を目指し、米国のみならず世界からの反発に直面していると著者は指摘。しかも米中の対決シナリオだけでなく、「裏の米中関係」による日本の頭越しのディール(取引)にも注意を喚起する。
このあたり、著者が米中関係に深い理解があることを物語る。実に、評者が矢板氏に出会ったのも北京ではなくワシントンDCであったのだ。(産経新聞出版・1300円+税) 評・渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)