◆星野仙一になりたい上司の勘違い
さて、星野仙一に話を戻そう。いまや、新人時代に星野仙一が理想の上司だとあげた者が、中間管理職になっている。ただ、星野仙一に憧れるのはいいが、「星野仙一になりたい」といって闘将然として振る舞うことには慎重になったほうがいい。
星野仙一のどの部分を尊敬するのか、憧れるだけか、あるいは実践しているのか…どこまで影響を受けているかにもよるが、星野仙一そのものの偉大さと、星野仙一に憧れる者の振る舞いとでは、ギャップ問題が起こらないか。
面倒なのは、“燃える男”を勘違いして単にモーレツ体質になっている者だ。かつて、星野仙一の指導スタイルは“怒鳴る殴る”で非常に厳しかったと知られているが、パワハラに匹敵する指導法や精神論・根性論を、そのまま現代の会社組織に持ち込むことは当然危険だ。
さらには、自分では面倒見が良いと思い込んでいても、部下からは支持されていない寒い者もいる。後輩たちの世話を見てやっているんだという“自己陶酔モード”で接せられると、暑苦しかったり無駄なストレスを抱えたり、部下としては非常に迷惑なのである。
中間管理職として働く中年たちは、自分が加害者になっていないか、落ち着いて考えるべきだろう。書いていて虚しくなったが、同世代の中年は管理職の者がいるんだな……。会社員時代は上司に恵まれたが、別にえらくなりたいとも、面倒くさいことをしたいとも思わなかった。だから私は会社を辞めた。星野仙一になりたい上司に限らず、勘違い野郎に潰されないこと、自分が勘違い野郎にならないことに気をつけたいところだ。