「闘将」星野仙一になりたい上司よ ただの勘違い野郎になっていないか (4/4ページ)

◆日本企業の課題は「上司力」

 ところで、このランキングは「ないものねだりランキング」なのではないかと感じてしまう。日本企業の課題は、「上司力」だ。長年の採用抑制により後輩に接する機会が少なかったこと、組織のフラット化により、役職が減ったことによる弊害などが理由として考えられる。

 また、仕事の進め方なども変化していると言える。ここ十数年は熾烈なグローバル競争やITの技術革新などビジネス環境が大きく変わった。さらに働き方改革の大合唱の中、労働時間を減らしつつ、パフォーマンスを上げなくてはならない。

 マネジメント対象も多様化している。新卒で入ってきた者だけでなく、中途入社の者、雇用形態が異なる者、出産・育児から復帰した者、仕事と介護を両立している者、障害者、性的少数者など多様な部下をマネジメントしなくてはならない。

 人材マネジメントに力を入れている企業は、「上司力」の向上に力を入れている。次世代リーダー育成研修、マネジメント研修、あるいは、若手の教育担当をすること、インターンの受け入れ担当をすることによるプチ上司体験などである。管理職向けの情報共有を推進し、この層向けの社内報をわざわざ立ち上げている企業もある。

 これだけ社会が変われば、求められる上司像も常にアップデートされている。誰を理想の上司アイコンに掲げるかはそれぞれの勝手だが、その振る舞いが時代に逆行していたり、周囲から痛いと思われていたりしないか、できれば自覚したいところだ。

【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)

常見陽平(つねみ・ようへい)千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【常見陽平のビバ!中年】は働き方評論家の常見陽平さんが「中年男性の働き方」をテーマに執筆した連載コラムです。更新は隔週月曜日。

▼常見陽平のビバ!中年のアーカイブはこちら