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こちらの投げた言葉を相手が受けとり、相手が投げ返してきた言葉をこちらが受けとり、また投げ返す。そうした会話のキャッチボールによって、コミュニケーションは進んでいきます。ところが、いまはこの原点が危うくなっているような気がしてなりません。それぞれが自分の言い分だけを伝え、相手の意見を聞かなくなっています。
なぜそうなってしまったのか。一因にはスマホの普及があるように思えます。自分がしゃべりたいことをしゃべったら、あとはスマホの画面に見入って、相手の話は上の空。これではコミュニケーションが深まるはずもありません。
会話においては「聞く」ことを大事にする
相手が何を伝えたいのか。どんな気持ちでいるのか。こちらに何を求めているのか。それらを正しくつかむには、聞くことしかありません。そして、つかむことができなければ、的確な言葉を投げ返すこともできないのです。会話は、相手の話をよく聞くという努力なしには成立しません。
話をよく聞く人は信頼されます。好例は営業職であり、どんな業種であっても、セールス実績をあげる人は、相手の話をよく聞く人です。マシンガントークで商品のよさをアピールするタイプではありません。一方的に話すだけでは、相手との距離は縮まらないのです。口数は少なくても、相手の話をしっかりと聞き、要望を知ろうと努める人が信頼を得て、セールスに結びつけています。
聞くことが信頼感につながる。これは営業にとどまらず、どんな人間関係にも通じる法則です。聞くことに力点をおいて、会話をしてみてください。じっと耳を傾けていると、その人との間にこれまでとは違った空気が流れます。
相手の話をしっかりと聞き、相手から信頼感を得られるような関係になれば、そのときは自然と、自分の価値観が絶対ではないという境地になっていることでしょう。
「禅の庭」をつくるときに、私は時折、「山是山、水是水(やまはこれやま、みずはこれみず)」という禅語を思い出します。意味するのは、「山は山として本分をまっとうし、水は水として本分をまっとうしている」ということです。山が水に対して「山になれ」と命令することもなければ、水が山に向かって「水になれ」と指図することもありません。