首の不調は、初期は首自体に痛みなどの症状が出ることが少なく、重症化するにつれて自覚症状が変化する。初期症状の肩こりを放置すると、頭痛やめまいを引き起こす。さらに放置すると、しびれが出てくる。「手のしびれ、手に力が入りにくいなどの症状は赤信号。放っておくと、指や腕、足などに麻痺がおこり、最悪の場合は四肢痙性麻痺に至ることもある」と三井氏は警鐘を鳴らす。
首のトラブル増加の背景にあるのは、パソコン、特にノートパソコンと、スマートフォン(スマホ)の普及だ。ノートパソコンやスマホを使うと、どうしても視線が下がりうつむいた姿勢になる。「下を向くと、前を向いているときに比べて首には5倍の力がかかる。頭の重さが10キロだとすると、50キロもの負荷がかかることになります」。
最近特に深刻なのが、首のヘルニア患者の増加だという。「昔は椎間板ヘルニアといえば圧倒的に腰だったのが、20年ほど前から逆転し、今では9割程度が首で来院する」と三井氏は話す。
首の骨は、頸椎と呼ばれる7つの骨からできていて、頸椎と頸椎の間には、クッションの役割をしている椎間板という軟骨がある。さらに頸椎の後ろにも、椎間関節という軟骨がある。下を向いたときの負荷がこの軟骨にかかり続けると、すり減って変形してしまう。変形した軟骨が神経に当たって痛みやしびれを起こすのが椎間板ヘルニアだ。「自分では気付いていない人が多いが、今の30代から50代のうち、8~9割の人は首のヘルニアか、ヘルニア予備軍ではないか」。