南海トラフの経済被害試算、国家予算の14倍 食い止めに38兆、対策どうする (2/4ページ)

地震で水道管が破裂し陥没した道路=18日、大阪府高槻市
地震で水道管が破裂し陥没した道路=18日、大阪府高槻市【拡大】

 それによると、南海トラフ巨大地震の発生から20年間の経済的被害は、道路や生産設備の損壊に伴う経済活動の鈍化で1240兆円、建物の直接的被害で170兆円とあわせて1410兆円に上る恐れがあるとした。この額は、過去最大を更新した平成30年度の一般会計予算(約97兆7000億円)の14.4倍に相当する。

 市民の平均所得(被災自治体のうち政令市)で換算すると、20年後までに800万円前後~2千万円以上も減少。例えば、大阪では、地震がなかったときに比べて、1758万円減ると試算され、単純平均すると年に約88万円分が失われる計算になる。

 被害を小さくするには、堤防、港湾施設の耐震強化、道路の整備などによる減災対策が重要だが、その費用は巨額だ。報告書は被害を4割程度減らすだけでも、38兆円以上の対策費がいるとする。

 これらは南海トラフ地震だけの推計で、首都直下地震と、大阪、東京、伊勢湾での高潮、巨大洪水に備えた減災対策を含めれば、60兆円以上の規模になる。

 政府の公共事業関係費の当初予算は、最近は6兆円前後。提言にある対策費は、その10倍にあたる。

 社会保障費増大、公共事業は縮小

 費用をかければ、かけれるほど対策が充実するのは確かだ。しかし、財政上のハードルがこれを困難している。

 大和総研の鈴木文彦主任研究員は「耐用年数の過ぎたインフラをすべて交換していくと、理屈のうえでは高度成長期に投資した金額と同じくらいの費用がかかってしまう」と指摘する。

減災対策の覚悟