劣化した芸術作品を修復する「絵画修復士」が西日本豪雨の被災地・岡山で活動している。本場イタリアで専門技術を学んだ女性2人が、浸水で傷んだ絵や家族写真、手紙、母子手帳などを無償で修復。猛暑の中、懸命に活動を続けるのは「思い出の品が復興に向かう被災者の心の支えになるはず」との信念からだ。作品に詰まった思い出をいたわるように一つ一つ手に取りながら日々、作業にあたっている。(浜川太一)
水を吸ってキャンバスの表面から剥がれかかった絵の具に、小筆を用いて専用の接着剤を塗り、慎重に貼り付けていく-。絵画修復工房「YeY(ワイイーワイ)」(岡山市)を運営する絵画修復士の斎藤裕子さん(41)と今村友紀さん(37)は、張り詰めた空気の中、真剣な表情で作品と向き合う。
2人は平成13年から3年間、イタリア・フィレンツェの専門学校で、ともに修復技術を学んだ学友。帰国後の18年に岡山市内で同工房を立ち上げ、美術館などが所有する油彩画などの保存・修復を手がけてきた。