原因は「情報過多」だけではない 現代人が欲望に振り回される根本原因 (4/5ページ)

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 ならば、現代社会で生じる複雑な問題、解決が不可能に思えるような問題も、環境を知性の一部にすることで対処が可能なのではないか。いや、人間は、社会は、もっと賢くなれるのではないか--そう考えた人々がいる。IT革命の旗手たちだ。

 情報技術の発展は、人類の知性をも発展させる。戦争、紛争、貧困、環境問題など、グローバルな問題も、情報技術を駆使すればいずれ解決されるだろう。IT革命の可能性を信じた人々は、そんなユートピアを思い描いていた。

 視野狭窄の原因は「情報過多」だけなのか?

 しかし現実には、片山氏が指摘するように、人々はますます視野狭窄に陥り、どの国々でも政治的対立が先鋭化している。片山氏は、その典型例として安倍政権への態度を挙げて、次のように説明している。

 <政権を支持する人は、政権を擁護する保守や右派系のサイトやブログ、アカウントばかりをフォローする。政権が嫌いな人は、リベラル・左派系のメディアしか見ようとしない。自分で考え、判断するどころか、味方の論法をそのまま真似て、相手を攻撃し悦に入る。あるいは、相容れないものは端っから無視する。負荷も減って楽だし、自分に近い意見だけに接すればストレスもかからない>(同前)

 この現状診断に異論はない。ただ、ひとつ疑問を投げかけるとすれば、人々が視野狭窄に陥っているのは、本当に情報過多が主要因なのだろうか。

ダマすための技術を生み出してしまう人間