――政府が音頭をとる格好で始まったばかりの「働き方改革」ですが、今後の展開をどうみますか。課題はありますか
「日本国民が『一億総活躍』をするための改革だと首相官邸のホームページに書いてあります。やっぱり労働力人口の減少というのがポイント。それで解決策として出ているのが、働き手を増やすことと、出生率を上げること。今の働き手を増やすというのは女性、高齢者、外国人(の活用)ですよね。あと生産性ですね。ただ、働き手うんぬんというのをちょっと置いておいて、そもそも、どうすれば国力アップするのかということを考えればいいと思うんですね。働き方改革の前に、国力をまず上げたいわけじゃないですか。僕はAIと国民の両方を使わなきゃだめだと思っています」
――AIをめぐっては、どこまで仕事を委ねられるか、人間の雇用を奪うのではといった懸念も聞かれます
「僕らもこの100年、200年、(機械から)いろんな便益を受けて暮らすようになっていて便利になっています。その延長だと思うんですよね。AIを研究している人を何人か知っていますが、彼らが言うには、日本はチャンスだと。労働力が減るので、そのアシストが実需的に必要だと。グーグルの話をまたしますが、いまのAIブームの以前から、もともと拠点として日本をすごく重視していました。(グーグル元副社長で日本法人社長も務めた)村上憲郎さんに十数年前に聞いたんですけど、その当時、日本にはAI系の技術者、研究者がすごく多いんだ、と。その資産があったのに、この5年くらいの動きでもしかしたら米中などに抜き去られてしまっているかもしれない。プログラミング教育とか始まりますけど、もっとそっちのほうに光を当てたほうがいいんじゃないかな」
――AI周辺で新たな雇用も生まれると期待する声もあります
「やっぱり高度技術者、付加価値のある国民を投資して増やしましょうということです。あと、『時間管理』を言い過ぎですよ。もちろんうちの会社も過剰労働は嫌いですし、長時間労働が続くと結局は疲労蓄積で生産性が落ちますからね。でも、健康管理とか健康支援とかすごく大事なんですけど、よく僕ら人材サービス系の人間で話すんですけど、社員ってすごく働きたいって気持ちがあるわけですよ。なんか若い時はやりつくしてみたい、というか(笑)。それを結構弱めている気がして。単なる時間短縮とか、有休をとりなさいとか。社員が働きたいとか、自分のスキルを極めたいとか、そういう気持ちを解き放つようなもの(施策)が本当は働き方改革にあってほしいですね」