探知機なし 盲点突かれた厳戒態勢
ベルギー同時テロベルギー同時テロではベルギーの治安当局が厳重な警戒態勢を敷いていたにもかかわらず、犯行を防げなかった。空港のセキュリティーのあり方が課題となる一方、欧州の中枢施設を抱えながら、かねて欧州諸国の中では脆弱(ぜいじゃく)とされたベルギーの治安体制も改めて問われそうだ。
ブリュッセル国際空港の出発ロビー。22日朝、容疑者の男3人はそれぞれスーツケースのような荷物を載せ、カートを押していた。ベルギーの検察当局が公開した容疑者とみられる男らの写真だ。その後爆発が2回起き、ロビーに煙が充満した。
テロは容疑者らが荷物を預けたり、検査を受けたりする前に起きた。空港では軍兵士が警備に当たっていたが、ロビーに外部から入る際、欧州以外でみられる金属探知機などはない。体制の盲点を突かれた形で、今後議論となる可能性もあるが、それだけに「事前の情報収集が重要だ」(専門家)の声も上がる。
だが、空港の爆発から約1時間、次はブリュッセルの地下鉄駅で爆発が発生した。「さらなる攻撃が起こることは常にあり得るが、これほどの規模は想像できなかった」。ベルギーのヤンボン内相は22日、テロを防げなかったことに苦渋の表情を浮かべた。ベルギーをめぐっては昨年11月のパリ同時多発テロを受け、ベルギーの治安体制に焦点があたった。2年前にもブリュッセルのユダヤ博物館が襲撃され、昨年8月のパリ行き国際特急列車での銃撃事件の容疑者はブリュッセルから乗車していた。
政府は多発テロ後、治安体制強化のため4億ユーロ(約500億円)の拠出を表明した。しかし、以前から、オランダ語圏と仏語圏の対立で連邦制をとるベルギーでは警察を含む行政の部局間の連携に課題があるなどと指摘されていた。
ヤンボン氏は「欧州で何かが動いていたのは承知していたが、この(テロの)情報はなかった」とも語った。今回のテロを受け、欧州として、その「首都」の治安をどう確保するかは大きな課題となりそうだ。(ブリュッセル 宮下日出男/SANKEI EXPRESS)
≪安倍首相 警備強化を指示≫
政府は23日、ベルギー同時テロで日本人男性2人が重軽傷を負ったことを受け、在外邦人の安全確保を徹底する方針を固めた。安倍晋三首相は23日、関係府省庁に対し「海外の邦人の安全確保や国内の警戒警備の徹底など、一層緊張感を持ってテロ対策に当たることが必要だ」と指示した。
政府は空港などでの水際対策を強化。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、欧州連合(EU)と情報面での連携を図り、テロの未然防止に全力を挙げる。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は記者会見で「空港や駅でのパトロール強化や新幹線への警察官乗車などを通じて官民連携でしっかりと警備したい」と強調。各国とテロに関する情報共有を図る考えも示した。
政府はベルギーの大使館に現地対策本部を設置し、邦人に不要な外出を避けるよう注意喚起を継続。犯行声明を出したグループがさらなる攻撃を示唆していることから、ベルギー以外の欧州各国に渡航する場合にも、治安情報に気を配るよう注意を呼び掛けた。
首相は、ベルギーに本部を置くEUのトゥスク大統領とユンケル欧州委員長に対し、テロを強く非難し、EUとの連帯を表明するとのメッセージを送った。
菅氏も「卑劣極まりないテロは許されるものではなく、わが国としては断固として非難する」と強調。伊勢志摩サミットに向け「先進7カ国(G7)議長国としてベルギーを含む国際社会と連携し、テロ対策強化のために積極的に取り組む」と述べた。
岸田文雄外相は、邦人2人が負傷したことを外務省で記者団に説明した上で「邦人の安全確保に全力で取り組む。国際社会と連帯しテロ対策に貢献したい」と語った。
≪サミット目前 情報収集に全力≫
首都の空港や地下鉄駅が狙われたベルギーの同時テロを受け、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年の東京五輪を控える日本では、警察当局が国内の重要施設などで警戒を強めた。国内でテロが発生するとの具体的な恐れは「現時点で確認されていない」(警察当局幹部)が、未然防止に向け関連情報の収集にも注力している。
「交通機関がやられれば首都機能は大打撃を受ける。空港は国の玄関口だけに日本の安全性の評価を左右しかねない」。首都の警備を担う警視庁の幹部はこう強調する。
羽田空港の国際線ターミナルでは、警戒に当たる東京国際空港テロ対処部隊による巡回頻度を増やした。地下鉄やバスの事業者には、不審物を発見した場合の通報を徹底するよう重ねて依頼。東京都千代田区のベルギー大使館周辺には22日夜から機動隊を派遣、警備を強化した。
東京が舞台となった国際テロの疑いがある事件は、1988年に発生したサウジアラビア航空東京事務所とイスラエル大使館を狙ったとみられる同時爆破がある。
国際テロに精通する当局者は「テロを防ぐには、武器や爆弾材料の調達、テロの呼び掛けなど不審情報の収集が欠かせない」と指摘、インターネットや会員制交流サイト(SNS)上の情報にも目を光らせている。(SANKEI EXPRESS)
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