現在、世界の海軍が建造している各種揚陸艦は計127隻で、6割近くがアジア・豪州に集中。中国の違法な領有・資源開発への警戒が、建艦ラッシュの主要な誘因となっている。違法な領有・資源開発がどこまで膨張するかは習近平(しゅう・きんぺい)国家主席(60)が好んで使うフレーズ「中華民族の偉大なる復興」の背景を探れば、自ずと明らか。即(すなわ)ち、明/清帝国時代(1368~1912年)の中華勢力圏の再建である。中華の礼式に服させ、見返りに王位を与えて統治を委任する冊封(さくほう)体制は一時、日本とその周辺、南シナ海やインド洋の関係国にまで及んだ。
特に、明の提督・鄭和(ていわ、1371~1434年)は、中華秩序建設も視野に、中東やアフリカ東岸まで大艦隊を率い、7回も遠征した。当時のマラッカ王国はインド洋遠征の根拠地となり、明帝国の保護下で成長した。
揚陸艦14隻を含め、世界屈指のハイペースで軍艦を建造中の中国。時代が下がって尚(なお)、世界の商船の半数が通航するマラッカ海峡の周辺国・港を「保護下」にせんと睨(にら)んでいる。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)