「東京都監察医務院の判定ではクモ膜下出血や脳室内出血の症状。皮膚が紫がかるチアノーゼが見られ、嘔吐による窒息や超劇症型の可能性はゼロではないが、一般的には死の兆候が早過ぎる。死ぬ1時間前『薬を飲み違えた』と周りに話しており、すっきりしない一件だった」
何かに脅えて自殺
一時は身辺警護までした公安当局は放免後も監視を続け、捜査資料は室井が38年以降、ソ連と誼を再開した証拠を列記している。室井を登場させた小欄の執筆は、毒殺された露連邦保安局(FSB)中佐の死因審問報道(7月12日)に触発されたためでもある。
中佐は、FSBの前身KGB(ソ連国家保安委員会)出身者らが牛耳る露政権の暗部を暴露し「裏切り者」となり、英国に亡命した。英公安当局は、KGB元諜報員が犯人と断定しており、危険物による暗殺は、露諜報機関のお家芸なのだ。
話を戻す。MVDの諜報活動を阻止せんと暗躍したのがGHQ(連合国軍総司令部)諜報組織のキャノン機関やCICだった。もっとも、代表部の諜報組織もMVDだけではない。