田中さんはそもそもオーロラを専門に撮影する写真家ではなく、22歳の頃からヤマセミを追いかけて全国をまわる野鳥写真家だった。その写真の腕は銀座の「富士フォトサロン」で個展を開くほどだった。
しかし、デジタル写真の登場でそれまでのフィルム写真が否定されたと落胆し、しばらく写真から遠ざかっていた。
そんな田中さんに転機が訪れた。オーロラ写真家の門脇久芳氏と出会い、フィンランドで実際のオーロラを目の当たりにして美しく波打つように揺れる光のカーテンにすっかり魅せられたのだ。再びカメラを持つのに時間はかからなかった。
≪デジタルで切り開いた表現の世界≫
その頃、写真界はデジタルへの移行が始まったばかり。フィルム撮影は気温が低いとフィルム感度が極端に低下し、揺れるオーロラはスローシャッターで流れてしまう。ところがデジタル写真では低温でも撮影感度はそのままで、揺れ動くオーロラを撮影することができたのだ。写真から離れる原因となったデジタル写真が今度は田中さんの味方についた。