外宮は、ご神体が移った後の旧社殿を外から見学することができた。ヒノキは黒光りし、1メートル以上の厚みのあった茅葺きの屋根は、長年の雨風ですっかりすり減り、苔が生えて20年の歳月を感じた。
参拝客が少なければもっと神を身近に感じられるかと思い翌日、内宮(皇大神宮(こうたいじんぐう))の早朝参拝に臨んだ。漆黒の闇が広がる午前5時。一の鳥居に着くとどこから湧いてきたのか結構な数の参拝客が集まっている。早朝の清冽な空気があたりを覆う。
何事の
おわしますかは 知らねども
かたじけなさに 涙こぼるる
西行が伊勢神宮を参拝して詠んだ歌だが、正宮へ向かう階段を一歩一歩踏みしめながらまさにそんな心境になった。神と対峙(たいじ)しているという実感が湧き、ただありがたさに頭を垂れる自分がいた。
鳥居をはじめ、社殿を囲む外壁など至るところに緑の榊が見られた。内宮と外宮合わせて100カ所に飾られ、10日に1回交換されるという。残念なことに内宮の旧社殿はロープが張られて近づくことができなかった。