けれども、それではやはり「絵画」たりえないとするなら、画家はそのことを自らの手で別様(べつよう)に証明してみせなければならない。だからといって、あくまでキャンバスと絵の具に依存するだけで絵画の正当性を主張するなら、そんなのは惰性でしかない。コンピューターグラフィックスとも伝統技法とも違う、第三の道を探らなければならないのだ。
困難だが画家に求められる稀なこの道を、現在の美術の世界で探求しているのが梅沢であると、まずは言うことができるだろう。時代の例に漏れず、梅沢もまた、ネットの世界にどっぷりと浸(つ)かることから始まっている。コンピューターの作り出す仮想世界に叛乱(はんらん)するキャラクターという実体のないアイコンに惹(ひ)かれた彼は、それらの図像を拾い集め、再編集し、現実の画面にびっしり貼り付けることで「画家」としての歩みを始めた。つまり、梅沢にとって、描くことは「書く/描く」とも「叩く/クリックする」とも異なる、両者の矛盾を統合するかたちで進められたのだ。