通らねばならぬ難関
もっとも、解決すべき問題は多かった。ネットの内部は現実の世界と異なり、現行の法律でも著作権の所在が明確とはいえない。いわば未開の領域だ。そこから引っ張ってこられたキャラクターたちは、画家が自由に編集してよい絵の材料とは言いきれない。アーティスト集団「カオス*ラウンジ」に属して行われた集団作業を通じて、梅沢は初めてこの問題に突き当たる。やがて、ネットから拾い集めたキャラクターの、いわば疑似的な「肖像権」を、実際の画面上で絵の具を使い、手と筆で解体することで乗り越えようと試みる。その結果、仮想の空間と具体的な絵の筆触を併せ持つ、彼ならではの画面を獲得したのである。ネット内での権利の問題は、彼の試みが真の意味で「絵画」となるために、一度は通らなければならない道であったといえるだろう。
「エクストリームAR画像コア」と題された本展では、梅沢はここからさらに先へと進むことを試している。コンピュータープログラマーのユニット「AR三兄弟」の協力を得て今回、梅沢は「拡張現実=AR」と、現実の画面とが独立しつつ共存する一種の「亜空間」を作り出そうとしている。それは、肉眼で絵を眺めるのと、コンピューターを通して観るときとで、同一の絵が異なる現れ方をするような多様な「画像」からなる。