【KEY BOOK】「図書館に訊け!」(井上真琴著/ちくま新書、840円)
図書館学や図書館員が書いた本はつまらないのが相場だが、なかで本書は図書館がゴーマンな理由をちゃんとあげているとともに、日本の図書館モデルの原型を緒方洪庵の適塾の「ヅーフハルマの部屋」において、どうしたら図書館が活力に満ちてくるかを述べていた。それでも本書には、本を文脈的に引き出してくるためのレファランス技能が語られていない。ぼくが大好きなヴァールブルク図書館の構想と構造についても、通りいっぺんにしかなっていない。残念だ。
【KEY BOOK】「触発する図書館」(大串夏身・鳴海雅人・高野洋平・高木万貴子著/青弓社、2100円)
ユビキタスなネット社会に対応しつつも、互いの知識が創発しあうような触発的図書館をどうつくればいいのか。この難問に某図書館長と設計事務所が協力してプレゼンテーションをした一冊だ。主旨も、アプローチの視点も悪くないのだが、ただし内容があまりに薄かった。ヴィジュアルイメージにも乏しかった。このように、図書館を変革するのはけっこう難しい。だから、よほどに思い切った切り口をもつ必要がある。ぜひとも共読空間に向かってほしい。