9月末から10月初旬。紅葉に染まるタイガを訪ねた。出発の際、空港ツアーデスクの女性係員が、度重なるロシアビザを見て尋ねてきた。
「いったいロシアの何がそんなに魅力なのですか。自然? 食べ物? それとも文化?」
これまでの旅のさまざまなシーンが脳裏をよぎり、言葉につまる。が、「空港の方が何をおっしゃいます。全部ですよ!」と答えておく。
語弊を恐れずいえば、ロシア極東のタイガは「巨大な田舎」だ。もちろん、僕にとって田舎とはいい意味で、野性的な自然に囲まれ、食べ物がうまく、何より人と暮らしが面白い土地である。いくら原生の森が広がり、珠玉の川が流れていても、このタイガに快活なウデヘの猟師たちがいなければ、繰り返し足を運ぶことはなかっただろう。
僕の住む北海道もいわば日本の田舎。風景にも人の暮らしにも土の匂いがする。しかしここはスケールがさらに大きく、「生」の実感に満ちている。旅はそのぶん一筋縄でいかず、ジグザグに進むしかないのだが、かすり傷を負いつつ川をのぼるサケのように、なぜか無性に戻ってきたくなるのである。