澄み渡る空と川風に包まれ、流れを遡(さかのぼ)るごとに自分の中の野生が目を醒(さ)ましていく気がする。森の中を滔々(とうとう)と水が流れている。人を乗せた小舟が水面を走ってゆく。ただそれだけの風景が、不思議なほどいとしく見える。
出発が昼過ぎにずれ込んだおかげで、陽が傾いてもまるで舟を止める気配がない。
「今日はどこまで行くんだ」。若いワーニャに聞くと「わからない」。そもそも時計を持たない猟師もいる。予定時刻は常に曖昧なのが「ウデヘタイム」だ。
倒木が川をふさいだ場所ではチェーンソーで1本ずつ木を切り水路を確保する。「帰りはここで釣りができる」とベテラン猟師のトーリャが笑う。難所は胴付を履いて腰まで水に浸かり、舟を引いてジリジリと越えていく。