「僕が訪ねているのは北海道の対岸の沿海地方ですが、こんなに近いのに、何も知らない所もないですしね」。腑に落ちぬ顔の係員にそういってチケットを手にした。
≪今できることに集中 それが生きる鍵≫
この季節、クラスヌィ・ヤール村の猟師は漁猟のほか都会から来るロシア人釣り客のガイドで忙しい。いわばかき入れ時で、日程の合う猟師を探すのは一苦労だ。さらに5年前にタイガで墜落したヘリコプターのパイロットの慰霊碑建立のため、村の猟師が駆り出されるという。幸いその一隻に便乗させてもらえることになり、上流のタイガに入ることにした。
約700キロの碑石、コンクリ袋、燃料のドラム缶、食料など山ほどの荷を積み、3隻で村を出る。
岸を離れた途端、ウスリータイガの彩り豊かな紅葉が果てしない織物のように岸辺を流れだす。落葉した木の上には、もしゃっと枝が重なる「クマ棚」。ツキノワグマが枝を折って木の実を食べた跡だ。