雨情の文章には「真摯」と「童心」がほとばしる。たとえば諧謔は、「滑稽を通り越した洒脱なる諧謔」だった。「諧謔は真摯な、涙ぐましいまでに率直な灌頂から出発する」と書いている。雨情は「意味がきりきりと洒脱に際立つものへの投企」に全身の言葉を向けた。それを子供の童心の池にぽちゃんと落とした。
【KEY BOOK】「郷愁と童心の詩人野口雨情伝」(野口不二子著/講談社、2900円)
雨情の生誕130年を記念して、昨年2012年に出版された。お孫さんの不二子さんが書いた。濃やかな血縁の視点で雨情の誕生秘話や人生彷徨の日々のエピソードを綴っているところが、類書にはない興味をそそる。不二子さんは野口雨情生家記念館の館長や茨城の県北生涯学習センター長も務めておられた。北茨城の磯原にある。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)