「ファッションのファの字も知らなかった」という「アッシュ・ペー・フランス(HPF)」代表の村松孝尚さん(左)と、「ファッション音痴」を自称する作家の天童荒太(てんどう・あらた)さん。意外な視点から「モード」が浮かび上がった=東京都渋谷区(宮崎裕士撮影)【拡大】
気持ちがいいかどうか
天童 モードの新たな視点によって、村松さんご自身、眠っていた消費者の才能を開花させてこられましたよね。
村松 僕は、日本人の女性のクリエーティブなものに対する理解力の高さは、世界一だと思っています。フランソワーズから財布も入らないバッグにクリエーションという価値があると教えられ、日本に持ってきた。そうすると、日本のお客さんは1人買い2人買い、クリエーションという消費市場を作らせていただいた。金の重さとか、そういった誰かが作った価値観ではないクリエーションに対して、「あ、いいんじゃない」と自分の中に取り込んでいける感性。それを引き出すことができたというのは、誇りに思います。
日本は、不景気だとか少子化だというけれど、それと一緒にマーケットが沈むというのは間違っていると思う。体の中に眠っているものを送り手側が引き出していけば、いくらでも消費市場は進化していく。
天童 でも、男性はまだまだファッションを楽しむところにまで行けていない。僕もそうだけれど、服を買いにいっても、店員さんが近づいてきただけでびびっちゃう(笑)。