「ファッションのファの字も知らなかった」という「アッシュ・ペー・フランス(HPF)」代表の村松孝尚さん(左)と、「ファッション音痴」を自称する作家の天童荒太(てんどう・あらた)さん。意外な視点から「モード」が浮かび上がった=東京都渋谷区(宮崎裕士撮影)【拡大】
質実剛健という文化に縛られてきた時間が長いから、飾るということがマイナスイメージになってしまっている。今回、いろんなお店やイベントを見て思ったのは、HPFは「飾る」ではなく「彩る」ということをしていて、集まってくる人たちも「彩り」を求めにきているんじゃないかと。生活を、人生を彩る。そういった言葉一つで、縛られてきた文化を解き放つ切り口になるんじゃないか。
村松 僕も「気持ちがいいかどうか」というキーワードがあるんですが、それはたぶん「彩る」ということと同じですね。飾り込むのではなくて、どういう生活や人との関係が気持ちいいか。
壊さずに前に進む
天童 今回表参道周辺を取材させていただいて、日曜はもちろん平日も人がいっぱいで、あらためて驚きました。その一方で、地方都市の駅前から続くシャッター通りがある。一概には言えませんが、そういった商店街は、大型店舗と価格やサービスで競争しようとして、いつの間にか彩るということを忘れた面はなかったでしょうか。人は、彩りに会いたいと思って外へ出てくる。無意識ながら何かしら良い影響を受けたいという思いで集まってくるものですから。