【溝への落とし物】
「自分のことはいいから」と最近よくつぶやくようにしている。
つぶやくとは比喩(ひゆ)ではない。律義に、本当に声に出して言ってみるのだ。これはある麻雀師が語っていた、勝負の極意、のようなものである。
他人によって自分は生かされている。つまり他の3人がいるからこそ、自分も一緒に麻雀ができるのだ、と大前提他者に感謝する。麻雀をしたことは数える程度しかないが、この言葉を聞いて、私はえらく感動した。そして私の生活にも、その素晴らしい精神が取り入れられないものか、と考えた末、とにかくことあるごとにつぶやいて、潜在意識に落とし込もうと考えてみたのである。
私は日頃から、暗示に非常にかかりやすい。たとえば「食後2時間は血液が胃のほうに回るから、集中力が下がるらしいよ」と誰かに聞かされれば、途端にそんな気がしてくる。今までは何食わぬ顔で食事後も原稿に向かっていたのに、急に集中力が著しく低下した気がして「ああ、胃に血液が回ってる。ああ、回ってる」と仕事が手に付かなくなるのだ。睡眠前におなかに食べ物を入れると眠れなくなる、とささやかれれば、おもしろいほどその通りになる。