「歌うとは分かち合うもの。競うものじゃない。自分のことを売り込むなんてさもしい気がしてできない」と、シャイな笑顔でコメント。彼女たちは自然と後ろへ後ろへと退いてしまう性質なのかもしれません。ただ、ごくたまにソロのチャンスを手にするバックシンガーもいますが、プロデューサーに騙(だま)されて売れている歌手の替え玉扱いされたり、小物扱いされて傷ついたり、軽んじられ都合よく利用されがちです。それもいい人すぎるからでしょう。
気苦労のない人生
ソロに挑戦したけれど失敗したタタ・ヴェガはこう言います。「もし私が成功して大金持ちになっていたら、ここにはいないでしょうね。ヤク中で死んでたわ(笑)」。確かにスターにはスターの気苦労があります。大金を手にして薬物に溺れたり、頂点に達した後転落したり、スキャンダルを書き立てられたり……。映画に出てくるミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイなどのやつれ具合や老化ぶりと比較すると、60~70代のバックシンガーたちはアンチエイジングでストレスフリー。実はスターにならない方がそこそこ幸せかもしれない、とふつうの人生を肯定できる映画です。(漫画家、コラムニスト 辛酸なめ子/SANKEI EXPRESS)