経済の好循環実現に向けた政労使会議であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相(左)。右から古賀伸明連合会長、米倉弘昌経団連会長ら=2013年12月20日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)【拡大】
産業別労組では、自動車総連(組合員約76万人)や電機連合(約60万人)のほか、流通などの労組でつくる連合傘下最大のUAゼンセン(約145万人)などがベアを求める方針を打ち出している。また個別労組でも、業績が好調なトヨタ自動車グループ各社の労組で組織する全トヨタ労働組合連合会が、ベア要求の方針を固めた。
組合側は当初、労使交渉への政府の介入に警戒感も抱いた。しかし景気が持ち直し、今後は物価上昇も予想される中で、デフレ脱却を掲げる政府と歩調を合わせた格好だ。
ただ、連合の古賀伸明会長は「(ベア獲得は)厳しい交渉になる」と述べ、楽観論には否定的だ。一部の経営者からはベアに前向きな声が聞かれるものの、業績改善の度合いは企業や業界でばらつきがある。
自動車総連がベア要求で具体的な金額を設定しなかったのも「アベノミクスと浮かれているが、(経済効果は)全体に行き届いていない」(相原康伸会長)ためだ。電機業界では日立製作所が過去最高の営業利益見通しを示す一方、シャープは経営再建の途上にある。
円安は企業業績の追い風になっているとはいえ、燃料・原材料価格の高騰や新興国勢との競争激化など、経営環境は依然厳しい。賃上げの動きが産業界全体に広がるかは不透明だ。(SANKEI EXPRESS)