そして現実へ
半ば呆然(ぼうぜん)としながら壁にかけられた時計を見上げる。-すると、深夜0時ぴったり。出来上がった小説は今までで一番出来がよく、読んだ編集者は「傑作だ」と飛び上がって喜ぶ。
「どうやって書いたんですか」と聞かれた私は「机に向かう時間を減らしてみただけ」と答える。「このやり方だと、今までより、ずっと効率よく書けるってことが分かったよ」
──そうであってほしい。私はまだ真っ白な画面が光っている、ノートパソコンを恐る恐る閉じた。(劇作家、演出家、小説家 本谷有希子/SANKEI EXPRESS)
■もとや・ゆきこ 劇作家、演出家、小説家。1979年、石川県出身。2000年、「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。07年、「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を受賞。小説家としても11年、「ぬるい毒」で野間文芸新人賞受賞。短編集「嵐のピクニック」で大江健三郎賞を受賞。最新刊は「自分を好きになる方法」(講談社)。